新しい施策を始めるたびに、社長であるあなたの仕事が増えているとしたら、その施策は設計を間違えています。私はWeb集客の仕組みづくりを支援していて、施策を作るときに「経営者に新しい業務を増やさない」ことを常に最優先にしてきました。
マーケティング施策の良し悪しは、たいてい「効果が出るか」で語られます。けれど現場では、もう一つ大事な軸があります。その施策は、経営者の可処分時間を減らさないかです。効果が見込めても、回すために社長が毎週新しい作業を背負うなら、それは続きません。
例1:紙の運用を変えずに、入口だけ自動化した
紙で入会管理をしている事業者の話です。入会希望者は紙を当日持参するか、紙を写真に撮ってメールで送る。会社の「紙で管理する」文化は変えられない前提でした。ここで「全部デジタル化しましょう」と言うのは簡単ですが、それは相手に新しい運用を覚えさせる——つまり仕事を増やす提案です。
やったのは逆でした。写真メールの側だけをフォームに置き換え、フォームの入力が紙の入会申込書のレイアウトに自動で流し込まれ、そのまま印刷できる仕組みをGAS(Googleの無料の自動化スクリプト)で作った。会社側の作業は今まで通り「印刷して紙で管理」のまま。入口の手間だけが消えました。写真をAIで読み取る、といった大げさな話ではありません。
例2:録音するだけで、発信のコンテンツになる
SNS運用を完全に丸投げされると、たいてい素材が集まらなくなります。こちらがゴーストライター化し、その事業だけが持つ一次情報(独自の経験や知見)が出てこないので、ネット検索で拾える一般論しか発信できない。結果、数字が出ません。
そこで実際にやっているのが、月1〜2回のミーティングで自由に喋ってもらい、録音・録画してAIで解析し、コンテンツに変換する型です。社長がやることは「喋る」だけ。記事や投稿を書く時間はこちらが引き受ける。作業は手放してもらい、想いと経験だけ出してもらう——これが崩れない設計の核です。
例3:紹介者が「集客だけ」に専念できる計測
ある会員制コミュニティの運営元では、紹介での集客はできても「どの流入元から来たか」が計測できていませんでした。誰の紹介経由なのか分からないと、紹介した人が自分で最後まで営業して契約を取るしかない。これは紹介者に重い作業を背負わせます。
そこで、流入経路を計測できる仕組みを入れ、公式LINEに登録した人が「どのページ・誰の紹介から来たか」判別できるようにしました。すると紹介者は契約作業から解放され、集客だけに専念できる体制になった。役割が分かれ、一人あたりの負担が減ったわけです。
共通するのは「業務の形を変えない」こと
3つの例に共通するのは、経営者や現場の人に新しい習慣を強いていないことです。紙は紙のまま、社長は喋るだけ、紹介者は紹介するだけ。デジタル化や自動化というと「新しいやり方を覚える」イメージがありますが、良い設計はむしろ逆で、今のやり方を変えずに面倒だけを引き取ります。
施策を検討するときは、効果の話をする前にこう問いかけてください。「これを続けるために、社長である私の毎週の作業は増えるか」。増えるなら、同じ効果を別の設計で出せないかを一度疑ったほうがいい。
正直な注記:手放せないものもある
正直に言えば、すべてを自動化できるわけではありません。喋る時間や、月1回のミーティングのように、社長にしか出せないものは残ります。そこは手放せない——というより、手放してはいけない部分です。減らすのは「作業」であって、「あなたにしか出せない一次情報」はむしろ積極的に引き出しにいきます。ここを取り違えて全部を外注すると、素材が枯れて数字が止まります。
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